ローンが借りられやすい資産状態とは!?
こんにちは、田中 です。
B/S(バランスシート)は、もともとは企業が株主などに財務の状況を開示するために作成するものですが、個人や家族でもB/S(バランスシート)を作成して、一年に一回、財産や負債などの状況を棚卸することで資産状況が一目で分かり、今後の対応策を考えることが可能になります。

ローンが借りられやすい(引きやすい)状態とは、銀行などの金融機関から「貸しても問題ない=返済能力が高い」と判断される状態のことです。
ローンが借りられやすい(引きやすい)B/Sの特徴(個人の場合):
資産(左側)サイド:
- 流動性の高い金融資産(預貯金、有価証券など)が多い
- 不動産(担保になり得る)などもプラス材料
負債(右側)サイド:
- 借入が少ない、または無理のない返済額になっている(返済比率)
- クレジットやローンの滞納歴がない
収入面(P/L的視点):
- 安定した収入源がある(給与や家賃収入など)
- 職業・勤続年数が長い、もしくは安定企業勤務
信用情報:
- CICやJICCなどにネガティブ情報(遅延、債務整理など)がない
ローン審査の観点において、個人事業主は 「収入の安定性が弱い」と見なされやすく、会社員(給与所得者)より審査はやはり厳しめです。
- 収入の安定性:会社員 高い(一定) / 個人事業主 変動がある(不安定と見られる)
- 証明資料 :会社員 源泉徴収票 / 個人事業主 確定申告書(2~3年分)必須
- 評価の傾向 :会社員定型的・シンプルな評価 / 個人事業主 金融機関による差が大きい
まとめ
- 流動資産多め+負債少なめ+安定収入+信用良好 のバランスが大切である
- ローンが通るかどうかは、主に返済能力の確認と個人信用情報の評価である
- 返済能力は、年収や勤務状況、借入状況などが重要であり、年収に対する返済比率が基準となる
- 個人信用情報では、過去の支払状況や債務整理の有無などがチェックされる

「不動産+借入(ローン)付き」が相続財産に含まれるケースは、実はかなり複雑で難しい局面が多い
「不動産+借入(ローン)付き」は、不動産を相続する際に住宅ローンやアパートローンなどの債務も同時に引き継ぐことになります。借入残高は相続財産のマイナスの部分として扱われ、相続税の計算で控除されますので、確かに相続税額を抑える効果があります。ただし、借入残高を引き継ぐことは、相続人がローンの返済義務を負うことを意味します。
借金があるから税金はかからない、は幻想
「ローンがあるから大丈夫。資産差し引いて、課税対象はないはず」という考え方は、実勢価格で考えたらそう見えるだけで、相続税は“評価額ベース”で計算されるため、ギャップが生じやすいと言えます。
承諾されるでしょ?相続だから、は、よくある誤解
金融機関は、借り手が亡くなった今、誰に返済させるかを再審査する必要がある、と見ています。
承諾されるケース(例)
- 相続人が会社員・公務員など安定職
- 相続人の年収・信用情報に問題がない
- 継続的な家賃収入が見込める(アパートローンなど)
拒否・保留されるケース
- 相続人が専業主婦・フリーター・無職・自営業(所得が読めない)
- 信用情報に傷(延滞・事故)がある
- 所得が足りず返済能力が乏しい
- 相続人が複数いて「誰が返済するか」が未確定(=債務者が不在状態)
ローンがあると戦略の自由度が下がる、と言われる意味
抵当権があると売却しにくい
- 相続後、納税のために不動産を売却しようとしても、抵当権が残っている限り、金融機関の同意なく売却不可
- 売却代金でローン残債を返せないと、基本売却はできず、 納税資金対策に支障が出ることもある
新たな対策が打てない(建築・買い増しなど)
- 今の借入が重いと、次の借入審査で否決される可能性=築古アパートを建て替えたくても資金が借りられない、買い増しのチャンスが来ても融資がつかない

金融機関の承諾を得やすくするための7つの対策
① 誰が引き継ぐのか、早めに「人物」を特定する
- 金融機関は「誰が債務を引き継ぐか」を最重視
- 相続発生前でも、「この子が管理していて、将来も運営していく予定です」と明確にしておくと安心感を持たせやすい
曖昧なままだと審査が止まることも(例:「とりあえず子供3人で相談します」)
② その人の属性(信用力)を整えておく
- 年収:定職(会社員・公務員)は◎
- 勤続年数:3年以上が安心ライン
- 借入状況:他にローンが多すぎるとNG
- 信用情報(CIC等):延滞・事故があると厳しい
- 税務申告の状況:自営業者は「確定申告3年分」が見られる
改善できる点があれば事前に対処を(例:他の借入整理、クレジットの使い方改善)
③ 「家賃収入」での返済可能性を示す
- 実際のアパート経営が安定しているなら、「〇〇万円の家賃収入があり、ローン返済に十分充てられます」と説明を
- 家賃収入を引き継ぐ人物が管理もできる場合、承諾を得やすい
金融機関は「返済原資が見えると安心」する。
④ 「同条件で借り換える」という提案をしておく
- 法定相続による債務引き継ぎ(債務引受)ではなく、「〇〇が借主として借り直す=借換」という形の方がスムーズに進む場合も
借り換えのつもりで準備すると、資料の整備や説明も明確になる。
⑤ 引き継ぐ側が「管理実績・意欲がある」ことを示す
- すでに家賃管理を手伝っている、確定申告に関与している、という実績があると強い
- 書類だけではなく、「人としての信頼感」を得るのがカギ
⑥ 金融機関との事前コミュニケーション
- 相続発生前でも、金融機関に相談できるならベター(支店長クラスと信頼構築)
- 「この人に引き継ぐつもりです。将来的に引き継げそうですか?」と事前確認
- 相続発生後だとバタつくが、事前に話が通っていればスムーズ
⑦ 「全体の相続方針」をセットで説明する
- 金融機関も「遺産争いリスク」は警戒する
- 遺言や遺産分割協議書で「不動産とローンは〇〇が引き継ぐ」と明記されていると安心される
あいまいな遺産分割では「債務者が決まらない=貸し先がいない」と判断され、ストップがかかることも
法律上、相続人は法定割合で自動的に債務も相続しますが、ローンは、「誰が返すか(債務者)」を金融機関が選ぶ立場にあることはお忘れなく。
まとめ
不動産とローンがセットになった状態での相続は、様々な課題が複雑に絡みます。
- 名義の問題
- 承継のハードル
- 評価と実態のギャップ
- 相続税納税資金の確保
「評価額」「実勢価格」「残債額」の三つの物差しを同時に見て、先手を打つことが大切です。
