「相続登記が義務になりました|知らないと困る3年ルールと新制度」
こんにちは、田中 です。
令和6年4月1日から、相続によって不動産を取得した場合、相続登記が法律上の義務となりました。
「相続登記って、やった方がいいとは聞いていたけど…」そんな方も多いのではないでしょうか。

今回は、この相続登記義務化について、押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。
なぜ相続登記が義務化されたの?
これまで相続登記は「任意」でした。
その結果、相続が発生しても登記されない土地が増え、全国の土地の約22%が「所有者不明土地」になっていると言われています。
所有者がわからないと、
- 売買ができない
- 再開発が進まない
- 公共工事が止まる
といった問題が起きてしまいます。こうした状況を改善するため、相続登記が義務化されました。
いつまでに登記しないといけない?
相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をする必要があります。
正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
昔の相続も対象?
対象です。ただし、すでに相続が発生している不動産については令和9年3月31日までの猶予期間が設けられています。
「何代も前の名義のまま…」という不動産をお持ちの方はこの機会に一度確認しておくことをおすすめします。
遺産分割が終わっていなくても大丈夫?
今回の改正で新しくできたのが「相続人申告登記」という制度です。
遺産分割がまとまっていなくても、
- 相続人の1人だけで
- 最低限の書類で
申請が可能です。これを行えば、ひとまず相続登記の義務を果たしたものと扱われます。
すぐに過料が科されるの?
いきなり過料が科されることはなく、まずは法務局から「登記してください」という催告が行われるようです。
また、
- 相続人が多い
- 相続トラブルがある
- 経済的に困難な事情がある
などの場合は、「正当な理由」として考慮されるそうです。

まとめ
相続登記義務化は、「罰を与える制度」ではなく、不動産の権利関係を整理し、将来のトラブルを防ぐための制度です。
不動産をお持ちの方は、
- 相続が発生していないか
- 名義が誰のままになっているか
一度、確認してみてはいかがでしょうか。

【追記】相続登記義務化でよく見かける注意点
相続登記が義務化されたことで、「知らなかった」「後回しにしていた」では済まされない場面が増えています。
実務の現場でよく見かける注意点をいくつかご紹介します。
①「相続税がかからない=何もしなくていい」は誤解
実務で非常に多いのがこの誤解です。
- 相続税の申告が不要
- 財産額もそれほど多くない
このようなケースでも、不動産がある限り、相続登記は必要です。
② 名義を変えないまま「次の相続」が起きると一気に複雑化
実務ではよくあります。
- 父名義のまま
- その父が亡くなり
- さらに母も亡くなり…
結果、
- 相続人が一気に増える
- 連絡が取れない相続人が出る
- 遺産分割協議が進まない
という悪循環に陥ります。相続登記は「次の世代への整理」この視点で早めに動くことが重要です。
③ 「とりあえず放置」は過料より怖いリスクがある
過料(10万円以下)ばかりが注目されがちですが、実務上はそれよりも深刻な問題があります。
- 売却したいのに名義が違う
- 融資が使えない
- 相続人の一人が反対して動かせない
登記未了=不動産が“凍結資産”になるという感覚を持っておくとわかりやすいです。
④ 「相続人申告登記=解決」ではない点に注意
新設された相続人申告登記は、とても便利な制度ですが、
- 所有権が確定するわけではない
- 売却や担保設定はできない
- あくまで「義務を果たした扱い」に過ぎない
という点には注意が必要です。相続人申告登記は「時間を稼ぐための応急措置」と理解すると実務では使いやすい制度です。
⑤ 不動産が複数あると「どれを相続したか分からない」問題
地方の土地や、昔取得した不動産がある場合、
- どこに不動産があるのか分からない
- 名義が誰なのか把握できていない
というケースも珍しくありません。
今後は「所有不動産記録証明制度」により把握しやすくなることが期待されていますが、現時点では生前のうちに不動産の棚卸しをしておくことが最大の相続対策と言えます。
⑥ 相続対策は「登記+分割+活用」をセットで考える
登記だけ済ませても、
- 共有名義のまま
- 使い道が決まっていない
- 将来また揉める
という状態では、本当の意味での相続対策とは言えません。
実務では、
- 相続登記(義務)
- 遺産分割(誰が持つか)
- 活用・売却・法人化など(将来設計)
を一体で考えることが重要です。相続登記の義務化は、不動産を次世代へスムーズにつなぐための仕組みです。


