家賃増額は本当にできる?不動産管理の現場目線で考える現実的な話
こんにちは、田中 です。
「最近、何でも値上がりしているけれど、家賃って上げられるの?」
不動産管理の現場では、ここ数年で家主様からこのようなご相談をいただく機会が増えています。
こうした背景には、物価上昇だけでなく、不動産を取り巻く環境の変化が考えられます。その一つが「地価」の動きです。
地価公示とは
地価公示法に基づき、国土交通省土地鑑定委員会により毎年公表する1㎡あたりの標準的な土地価格のことです。
一般の土地取引や公共用地の取得価格の目安として活用されるほか、不動産市場の動向を把握する指標としても広く参考にされています。
令和8年 地価公示の概要
令和8年の地価公示では、全国約26,000地点を対象に調査が行われ、全体として地価の上昇傾向が継続しています。
全国平均
・全用途平均、住宅地、商業地いずれも5年連続で上昇
・特に商業地は上昇幅が拡大
・住宅地は前年と同水準の上昇幅
三大都市圏
・全用途で5年連続上昇、かつ上昇幅拡大
・東京圏・大阪圏は上昇傾向がより顕著
・名古屋圏はやや落ち着き
地方圏
・全体としては上昇継続
・地方主要都市では上昇幅はやや縮小傾向

その一方で、
・借主との関係悪化への不安
・クレームやトラブルの懸念
・法的に問題がないかという心配
こうした理由から、長期間家賃が据え置かれているケースも少なくありません。
本記事では、「家賃を上げるべきかどうか」という結論ではなく、なぜ今このテーマが増えているのか、そして実務ではどのように考えているのかを整理していきます。
なぜ今「家賃増額」の話が出てくるのか
① コストの上昇
家主側の負担は、年々増加しています。
・固定資産税・都市計画税
・管理費・清掃費
・共用部の光熱費
・修繕費・人件費
特に近年は、個別ではなく複合的にコストが上昇している点が特徴です。
② 賃貸需要の底堅さ
・住宅価格の上昇
・金利上昇への警戒感
こうした背景から、「購入ではなく賃貸を選択する層」が一定数存在しています。
賃貸市場は、投機よりも実需の影響を受けやすく、コスト上昇が徐々に賃料へ反映される構造があります。
ただし、家賃は簡単には上げられない
ここで重要なのは、家賃は貸主が一方的に決定できるものではないという点です。
例えば、
・「次回更新から賃料を上げます」という一方的な通知
・更新を利用した事実上の圧力
こうした対応は、実務上トラブルにつながる可能性があります。背景には、借主保護の色合いが強い「借地借家法」があります。
実務で押さえておくべき考え方
法律上、「賃料増額請求」という制度は存在します。
ただし、これは必ず認められるものではなく、個別事情に応じて判断される性質のもので、現在の賃料が「不相当」といえるかどうかです。
判断の主な視点
実務では、次のような要素を総合的に検討します。
・税金や維持費などの増加状況
・物価や地価といった経済事情の変化
・近隣類似物件との比較(特に継続賃料)
・契約経緯や据え置き期間
※いずれか一つではなく、「総合判断」である点が重要です。

現場ではどう判断しているのか
実務上は、「法的に可能か」よりも「実行した場合の影響」を重視します。
例えば、
・退去リスクの増加
・クレーム対応コスト
・空室期間の長期化
など、結果として収益を下げる可能性もあるためです。
そのため、
・相場の確認
・物件ごとの状況整理
・借主との関係性の把握
こうしたプロセスを踏まえ、段階的に判断していきます。
まとめ
家賃増額は、「すべきか、すべきでないか」という単純な問題ではありません。
ただし、一方で、長期間何も見直さないこと自体がリスクになる時代になってきているのも事実です。
不動産管理においては、
・法律
・市場環境
・現場での実務感覚
これらを踏まえながら、家主・借主双方にとって無理のない着地点を探ることが重要です。
賃料の見直しは、一つの正解があるものではありません。だからこそ、その時々の状況に応じて無理のない形を探っていくことが、結果として長く安定した運用につながるのではないかと感じています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別具体的な案件については専門家へご相談ください。


