なぜ事業承継は難しいと感じるのか ~相続税対策の前に考えたい“引き継ぎたくなる資産とは”~
こんにちは、田中 です。
相続や不動産のご相談で、「相続対策は何をすればいいですか?」というご質問をいただくことがあります。
相続対策では、生命保険・家族信託・法人化・遺言など様々な制度が話題になります。
しかし、これらの制度を考える前に、実は大切なテーマがあります。
それが、「事業承継」です。事業承継というと、会社経営者だけの話と思われることがあります。
賃貸経営・アパート経営・駐車場経営・貸地経営などを行う地主・不動産オーナーの方にとっても、とても重要なテーマです。
今回は、「事業承継とは何か」「なぜ難しいと感じるのか」「何を考えておくべきか」について整理してみたいと思います。

事業承継とは何か
事業承継というと、会社を子どもへ引き継ぐことと思われることがあります。実際には、それだけではありません。
例えば不動産オーナーの場合、
- 土地
- 建物
- 借入
- 賃貸契約
- 管理方法
- 取引先
- ノウハウ
なども含めて次世代へ引き継ぐことになります。
つまり、事業承継とは、単に財産を渡すことではなく、「資産を維持しながら運営する仕組みを引き継ぐこと」とも言えるかもしれません。
なぜ事業承継は難しいと感じるのか
財産を渡すこと自体は比較的簡単です。難しいのは、「引き継ぐ人の気持ち」です。
親世代は、「土地は守るもの」と考えていることがあります。
一方、子世代は、「管理が大変そう」「遠方に住んでいる」「興味がない」と考えていることもあります。
親にとっては大切な資産でも、子どもにとっては負担に感じることもあります。そのため、相続税対策だけでは解決できない問題が発生するのです。
事業承継で本当に大切なこと
個人的には、事業承継で最も大切なのは、「引き継ぎたくなる状態になっているか」だと思います。
例えば、
- 空室が多い
- 修繕が必要
- 赤字が続いている
- 管理資料がない
- 借入状況が分からない
という状態では、相続人も不安になります。
反対に、
- 収益状況が分かる
- 修繕計画がある
- 管理体制が整っている
- 将来の方針が整理されている
という状態であれば、承継しやすくなります。
借入があることは悪いことなのか
不動産オーナーの方から、「借金があるから子どもに迷惑をかける」という話を聞くことがあります。
もちろん、無理な借入は注意が必要です。しかし、借入があること自体が問題とは限りません。
重要なのは、
- 返済できるのか
- 収益が出ているのか
- 資産価値があるのか
という点です。
例えば、収益不動産として安定して稼働しており、売却も可能な状態であれば、借入だけを見て判断することはできません。
借入額ではなく、資産全体のバランスを見ることが大切です。

相続対策と事業承継は違う
ここは誤解されやすいポイントです。
相続対策は、
- 相続税
- 納税資金
- 遺産分割
などが中心になります。
一方、事業承継は、
- 管理
- 運営
- 収益
- 後継者育成
なども含まれます。
つまり、相続対策は事業承継の一部であって、事業承継そのものではありません。
法人化・家族信託・生命保険との関係
これまでのブログでも触れてきましたが、
- 法人化・・・資産管理や承継の仕組みを整える方法
- 家族信託・・・認知症などに備えた財産管理の仕組み
- 生命保険・・・納税資金や遺産分割対策の手段
は、それぞれ役割が異なります。どれも重要ですが、あくまで、事業承継を支えるための選択肢です。
事業承継はいつから考えるべきか
事業承継は、相続が発生してから考えるものではありません。
一般的には、元気なうちから、少しずつ準備を始める方が良いと言われています。
理由は、時間が必要だからです。
- 資産整理
- 借入整理
- 修繕計画
- 相続対策
どれも数年単位で考えるテーマです。
そのため、「まだ早い」と思う時期が、実は一番考えやすい時期なのかもしれません。
まとめ
事業承継とは、単に財産を引き継ぐことではありません。
- 誰が管理するのか
- 誰が承継するのか
- 収益は維持できるのか
- 将来どうするのか
まで含めて考える必要があります。
その意味では、法人化・家族信託・生命保険はゴールではなく、目的を実現するための手段とも言えます。
事業承継を考える際には、まず、「何を残したいのか」「誰に引き継ぎたいのか」を整理することが大切だと思います。
最後に(私的意見)
私は、事業承継で本当に怖いのは、相続税が高いことではないと思っています。
本当に怖いのは、誰も引き継ぎたからないことです。
- 収益が出ない
- 管理が複雑
- 資料がない
- 家族が興味を持たない
こうなると、どれだけ節税をしていても、資産を維持することは難しくなります。
反対に、
- 家族で話し合いができている
- 管理方法が整理されている
- 将来の方向性が共有されている
そのような状態であれば、制度の活用もしやすくなります。
事業承継は、税金から始まるのではなく、コミュニケーションから始まるのかもしれません。
※ 本記事は一般的な考え方の整理を目的としたものであり、個別事情によって取り扱いが異なる場合があります。実際の契約・税務判断等については、税理士・弁護士・FP・保険会社等の専門家へご相談ください


