「信託」のはなし 〜投資信託から家族信託まで、安心の選択肢〜
こんにちは、田中 です。
信託というと、どういったイメージをもっていますか。
やや硬い響きではありますが、実は、使い方によっては、「人生に安心をプラスする選択肢」 として、とても強い味方になります。
生活資産・相続・介護・子育て・非営利支援まで、暮らしに即した目的を持って使うことで、もしかしたら未来設計が叶うかもしれません。
ご自身や家族のライフプランに合わせて、「信託という道具」を選択肢の一つにしてみてはいかがでしょうか。

信託ってそもそも何?
自分の財産を信頼できる人に預けて、その人に管理・運用・処分してもらう仕組みのことです。
- 財産を預ける人 → 委託者(いたくしゃ)
- 財産を預かって管理する人 → 受託者(じゅたくしゃ)
- 最終的に利益を受ける人 → 受益者(じゅえきしゃ)
たとえば…
「高齢の親(委託者)」が「信頼できる子ども(受託者)」に不動産を託し、「親自身(受益者)」が家賃などの利益を受け取る。
信託は、「信託法」という法律で、委託者・受託者・受益者の関係、財産管理のルール、信託終了の条件などが定められています。
投資信託って何?
投資に興味はあるけれど、「何から始めたらいいか分からない」「株はハードルが高そう…」と思っていませんか?そんな方にピッタリなのが【投資信託】です。
投資信託(ファンド)とは、多くの投資家から集めたお金を、運用のプロが株や債券などに分散投資する金融商品のことです。
投資信託の仕組み
私たち投資家が、委託者=受益者になります。運用会社(プロ)に運用を託します。

投資信託のメリット・デメリット
投資信託は、手離れするメリットがあるものの、何にどれだけ投資するかをしっかり見極め、極力コストがかからないものを選択する必要があります。
メリット
- 少額から投資できる(1,000円程度からスタートOK)
- 運用はプロにお任せ(情報収集や分析をしなくていい)
- 分散投資でリスク軽減(複数の銘柄に投資)
- 管理が簡単(自動積立・再投資もできる)
デメリット
- 手数料がかかる(購入時手数料・信託報酬など)
- 中身が見えにくい(運用の透明性は商品によって差がある)
投資信託の「中身」をのぞいてみよう
投資信託は、“箱”のようなもので、中にはさまざまな資産が入っています。
たとえば…
- 資産の種類(アセット):海外株式、国内株式、債券、REITなど
- 国の分散:米国、日本、先進国、新興国…世界中に投資可能
- 銘柄数:数十〜数千銘柄(1つで超分散可能)
- 業種の分散:医療・IT・インフラなど様々
信託報酬が高い=運用にコストがかかるため、下落時にパフォーマンスを圧迫することも。中身とコストのバランスはチェックが必要です。
投資信託の基本用語
- ファンド : 投資信託のこと(例:米国株式ファンド)
- 証券口座 : 投資信託を買うための口座。NISAや特定口座が選べる
- 交付目論見書 : 法律で定められた、購入時に読むべき重要書類
- 基準価格 : 投資信託の値段。10,000円からスタートするのが基本
- 分配金 : 投資信託の利益の一部。普通分配金は課税あり、特別分配金は非課税
- インデックスファンド : 日経平均やS&P500など、指数に連動する運用をする商品
リスクと上手に付き合う方法
「リスク=危険」と思われがちですが、投資の世界でいうリスクは「価格の振れ幅」のことで、上がることもあれば下がることもある、という意味です。
リスク軽減の3つの工夫:
- 資産分散:株、債券、REITなど異なる資産に分けて投資
- 時間分散:毎月コツコツ買う(ドルコスト平均法)
- 中長期保有:長く持つことで短期的なブレを吸収
投資信託の選び方(始める前に考える3つのこと)
投資の目的をはっきりさせよう
- 老後資金の準備
- 教育資金
- 住宅取得資金 など
投資期間を考えよう
- 長期(10年以上)
- 中期(3〜10年)
- 短期(1〜3年)※短期にはあまり向かない商品も
投資できる金額を見極めよう
- 無理のない範囲でOK
- 生活資金と分けて、余剰資金で投資
- NISAやiDeCoの上限もチェック
手数料(コスト)に注意!
直接かかるコスト
- 購入時手数料:購入時にかかる(最近は無料=ノーロードも多い)
- 信託財産留保額:解約時に差し引かれる(特に債券型で多い)
間接的にかかるコスト
- 信託報酬:運用中にかかるコスト(毎日少しずつ引かれる)
信託報酬が 1.0% か 0.1% かで大きな差が!
例:月3万円×20年積立=元本720万円/リターン年5%想定
- 信託報酬 信託報酬額(概算) 損益(概算)
- 0.1% 約15万円 約2,297万円
- 1.0% 約147万円 約1,952万円
コストが低ければ、その分パフォーマンスに直結します。
失敗しないためのヒント
- むやみに銘柄を増やさないようにしよう(最初は3本程度で)
- 中身の重複に注意(似た商品ばかりになってないか確認しよう)
- 投資金額は少しずつ増やそう
- 人気やランキングだけで選ばない
- 支出の見直しも投資以上に効果大(無駄な固定費をカット)
- ハイリスク商品は趣味の範囲で(余剰資金でお試しを)
投資信託は、少額から始められる・プロに任せられる・分散投資ができるなど、初心者にとって心強い金融商品です。でも、万能ではないことも事実。中身やコストをしっかり見て、自分の目的に合った商品を選ぶことが大切です。
商事信託と民事信託の違い
信託には、実は、商事信託と民事信託の2種類があります。
商事信託「ビジネスとして本格的な信託サービスを提供」
- 実施主体:信託銀行や信託会社
- 主な目的・用途:営利目的、運用・管理・分配をビジネスとして提供
- 代表例:投資信託、年金信託、遺言信託、信託銀行サービスなど
民事信託「家族や信頼関係で柔軟に使える信託」
- 実施主体:家族・親族・個人間
- 主な目的・用途:資産管理・承継・認知症対策など生活支援的用途で使用
- 代表例:家族信託・認知症対策、家族間の不動産信託、ペット信託、障がい者支援信託など
家族信託とは?
民事信託の中でも、家族内で信頼関係をもとに行う信託を「家族信託」と呼びます。
どんなときに使う?
- 認知症対策:親が判断能力を失っても、不動産の管理売却ができる
- 障がい者支援:障がいのある子どもの将来の生活資金を信託で保障
- 財産承継:相続争いを避けるために、不動産や自社株の継承ルートを信託で決めておく
- ペット信託:飼育資金や後見人をあらかじめ決めておく
- 定期分配信託:浪費癖のある子どもに使途を制限してお金を渡す方式
- 受益者連続信託:親→子→孫に段階的に財産を渡す仕組み
どうやってつくる?
信託証書(信託契約書)を作成します。委託者・受託者・受益者・どの財産を、どんな目的で、どう運用・分配するかを明記します。公正証書にするかは任意ですが、不動産を含む場合は公証人役場で署名・実印・印鑑証明が必要になります。信託登記を法務局ですることで、「誰の財産か」を明確にします。合法に運用するために、信託契約では「目的」「管理・運用方針」を明しく記載する必要があります。
どんな信託が合う? (ケーススタディ)
- 目的:不動産管理/相続対策
- 信託種別・方法:家族信託(子を受託者、親を受益者)
- ポイント:成年後見なしで財産管理が可能
- 目的:障がいのある子に資金保障
- 信託種別・方法:障がい者支援信託/定期分配信託
- ポイント:安定した生活費の分配が可能
- 目的:将来の相続争いを回避
- 信託種別・方法:家族信託(受益者連続信託)
- ポイント:承継ルールを明確にできる
- 目的:遺言より柔軟な遺贈
- 信託種別・方法:遺言代用信託(商事信託)
- ポイント:法的効力が高く、第三者管理も
- 目的:教育・結婚資金の非課税管理
- 信託種別・方法:教育信託、結婚資金信託(期間限定)
- ポイント:贈与税の非課税枠を活用可能
まとめ:信託は「目的ありき」のツール
信託そのものは、どちらかというと目的を実現する道具です。資産を増やすのではなく、安心・管理・承継の設定が中心になります。資産運用を目的にする場合は、信託契約に運用目的を明記するか、商事信託の商品を使う必要があります。ぜひご自身や家族のライフプランに合わせて、必要に応じて信託という道具を検討してみてはいかがでしょうか。
