令和8年度税制改正大綱(不動産・相続・贈与)要点まとめました
こんにちは、田中 です。
令和7年12月19日、与党より「令和8年度税制改正大綱」が公表されました。
本記事では、その中でも 不動産・相続・贈与に関連する主な改正点を中心に、一部私見も含めてまとめています。

なお、本内容はあくまで税制改正大綱(速報ベース)に基づくものであり、正式な内容は今後の国会審議を経て確定する点につきまして、あらかじめご了承ください。
全体的な方向性
今回の税制改正大綱を俯瞰すると、次のような思想が一貫しているように感じます。
実需・居住目的の住宅取得は引き続き後押しする
- 居住目的の住宅取得は引き続き支援
- 床面積40㎡基準を広く容認
- 災害危険区域は一貫して厳格化
一方で、以下については静かに、でも確実に網をかけていく方向性
- 行き過ぎた相続対策
- 課税の抜け道的なスキーム
- 富裕層による過度な税負担回避
住宅ローン控除・住宅取得関連(概要整理)
① 住宅ローン控除
- 適用期限:令和12年(2030年)12月31日まで延長
- 所得1,000万円以下であれば、床面積40㎡以上でも適用可能(子育て特例不使用の場合)
- 子育て特例を使う場合は、引き続き 50㎡以上必須
控除限度額については、
- 高性能住宅(長期優良・ZEH)を重視
- 令和10年以降は原則縮小方向
という流れが見て取れます。
② 災害危険区域に関する共通ルール
- 災害危険区域内の新築住宅は、住宅ローン控除・各種優遇の対象外
- ただし、
- 親族が5年以上居住していた家屋の建替え
- 建築確認時点で敷地全体が非該当などは例外あり
リフォーム・中古住宅関連の優遇
- 耐震・省エネ・バリアフリー等の改修に対する所得税控除・固定資産税軽減を延長
- 床面積要件を50㎡ → 40㎡へ緩和(所得1,000万円以下)
中古住宅+改修による居住は、引き続き政策的に支援される位置づけです。
住み替え・譲渡関連特例(延長中心)
以下の特例はいずれも延長されました。
- 居住用財産の買換えによる譲渡益の課税繰延
- 譲渡損失の損益通算・繰越控除
- 低未利用土地の100万円控除
- 土地の所有権移転登記に係る登録免許税の軽減
ここでも災害危険区域内の新築住宅は原則対象外というルールが共通しています。
住宅及び土地の取得に係る不動産取得税の軽減措置(住宅取得促進税制の拡充・延長)
大きな制度変更はなく実需向け住宅取得を支援するための軽減措置の延長・一部拡充が中心です。
今回の改正大綱全体の中では、「実際に住む人は守る」というスタンスが最も分かりやすく表れている項目と言えるでしょう。

貸付用不動産の相続税評価額の変更(過剰な相続対策の抑制措置)
改正のポイント
相続開始前5年以内に、
- 有償で取得した貸付用不動産
- 新築した一定の貸付用不動産
については、相続税評価額を「時価」で評価するとされました。
これは、
- 相続直前に投資用マンションを購入
- 新築アパートを建てて評価額を圧縮
といった短期的・節税目的の相続対策に対する明確なメッセージと考えられます。
つまり、相続対策目的で直前に取得・新築した貸付不動産については、 評価減は原則認めません、という内容です。
なお、
- 5年以上前から保有している不動産
- 相続対策以外の合理的な取得経緯があるもの
については、従来どおりの評価が維持される余地があります。
これは、暦年贈与の持ち戻し(3年 → 7年に延長)と同様、 「時間」を重視する考え方が不動産にも及んできた、と理解すると分かりやすいです。
非居住者 × 仲介手数料(消費税の課税範囲の拡大)
改正のポイント
非居住者に対して、
- 日本国内の不動産売買に関する仲介・紹介・コンサルティング等の役務提供
を行った場合、消費税の免税取引から除外し、課税取引とするという整理が示されました。
誤解しやすい点
これは、
- 日本の宅建業者が通常行う仲介業務
に新たに課税する、という話ではありません。 (もともと国内業者の仲介手数料には消費税が課税されています)
つまり、
- 非居住者(外国人投資家)
- × 非居住者(海外仲介業者・海外コンサル会社)
- × 日本の不動産
という構図です。
これまで「国外取引」と整理され、消費税がかからなかったケースについて、日本の不動産取引に密接に結びつく役務である以上、 国内取引として課税するのが合理的という考え方へ転換した点がポイントです。
外国人投資家そのものを排除する規制ではなく、 課税の抜けを塞ぐ実務的な改正と理解するのが適切でしょう。
極めて高い水準の所得に対する負担の適正化(いわゆる富裕層課税の強化)
改正のポイント
ミニマムタックス(最低税率)
- 適用基準となる所得水準を引き下げ 3.3億円 → 1.65億円
- 適用税率を引き上げ 22.5% → 30%
極めて高い所得を得ている層の税負担を適正化する方向性が示されました。
この改正は、
- 法人化
- 不動産の保有主体の切り分け
- 所得分散
- 保険・退職金スキーム
といった従来から使われてきた不動産×税務戦略を一律に否定するものではありません。
ただし、「なぜこのスキームが合理的なのか」 「事業性・実態は何か」といった点について、これまで以上に説明責任が求められる時代に入った、という印象です。
一足飛びに「全部ダメ」になるわけではないものの、
- 形式だけ整えた節税
- 実態の乏しい法人・取引
については、今後厳しく見られる可能性が高いと感じます。
おわりに(まとめ)
不動産・相続の世界は、正解が一つではなく、時間軸で評価が変わり、制度変更の影響を強く受ける分野でもあります。
特に不動産は、税金を下げるための道具ではなく、目的・合理性・保有期間が問われる資産へと確実に位置づけが変わってきていると感じます。


